はじめに
相続人が複数いる場合には、相続人が確定しないと、各相続人の相続分が決まらず、遺産分割の当事者も決まらないことになります。
遺産分割をするためには、その前提として、相続人の範囲(誰と誰が相続人であるのか)を確定しなければなりません。
遺産相続に関する争いとして、相続人の範囲が争われることがあります。
相続人の範囲に関する争いについて、話し合いがまとまらない場合には、調停や訴訟(裁判)によって解決を図る必要があります。
以下では、相続人の範囲に関する調停・訴訟について、ご説明させていただきます。
実親子関係・婚姻関係・養子縁組に関する調停・訴訟
実親子関係に関する訴訟としては、①親子関係不存在確認の訴え、②認知の訴えなどがあります。
①親子関係不存在確認の訴えは、戸籍上、被相続人の子とされているが、そうではないことの確認を求める訴訟です。
②認知の訴えは、子が被相続人である父に対し、認知を求める訴訟です。
婚姻関係に関する訴訟としては、①婚姻無効確認の訴え、②離婚無効確認の訴えなどがあります。
これらは、婚姻・離婚の意思がないにもかかわらず、無断で婚姻届・離婚届が提出されているなどの理由で、被相続人との婚姻・離婚の無効の確認を求める訴訟です。
養子縁組に関する訴訟としては、①養子縁組無効確認の訴え、②離縁無効確認の訴えなどがあります。
これらは、養子縁組・離縁の意思がないにもかかわらず、無断で養子縁組届・離縁届が提出されているなどの理由で、被相続人との養子縁組・離縁の無効の確認を求める訴訟です。
なお、これらの訴訟は、原則として、訴訟の提起前に、まずは調停を申し立てる必要があるとされています。
実親子関係・婚姻関係・養子縁組が確定することで、相続人の範囲が明らかになり、遺産分割の手続を進めることが可能となるのです。
その他の相続人の範囲に関する調停・訴訟
その他の相続人の範囲に関する訴訟としては、相続権不存在確認の訴えなどがあります。
特定の相続人に相続欠格事由が存在する場合、相続人廃除された場合、相続放棄をした場合、相続分の全部を譲渡した場合には、相続権を失うことになります。
そして、これらの行為があった場合には、その相続人に相続権がないことの確認を求める訴訟(相続権不存在確認の訴え)が提起されることになります。
相続欠格・相続人廃除・相続放棄についてはこちら
●相続欠格と相続人廃除
●相続放棄と限定承認
なお、相続権不存在確認の訴えは、原則として、訴訟の提起前に、まずは調停を申し立てる必要があるとされています。
弁護士にご相談ください
相続人の範囲のような遺産分割の前提問題に争いがあるときは、遺産分割に先立って解決を図る必要があります。
解決のための手続は、法律の専門家でない方にとっては、非常に複雑なものであり、弁護士のサポートなしでは対応が困難です。
遺産相続をめぐる争いには様々なものがありますが、相続問題に精通した弁護士であれば適切な解決に導くことが可能です。
遺産相続の問題でお困りの方がいらっしゃいましたら、まずは相続問題に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
遺産分割の前提問題に関する争いについてはこちらもご覧下さい
●遺産分割の前提問題に関する争いについて
●相続人の範囲に関する争い
●遺産の範囲に関する争い
●遺言の効力に関する争い
●遺産分割協議の存否・効力に関する争い