相続放棄をした場合、手元にある遺産は相続権を得た次の順位の相続人に引き渡すのが原則的な対応です。

一方で、相続人が全員相続放棄をした場合には、相続財産清算人に引き継ぐ、あるいは自身で管理するといった対応になりますが、詳しくは以下の関連Q&Aをご参照ください。

【関連Q&A】
●相続放棄をする場合に受け取れないものが手元にある場合は、どうすればよいですか?
●相続人全員が相続放棄をしましたが、放棄された不動産を放置しても大丈夫ですか?

ここで、相続放棄をしたあと、相続権を得た次の順位の相続人が相続放棄をしないため、手元にある遺産をその相続人に引き継いでほしいと思っても、その相続人が受け取りを拒否する場合、あるいは連絡が取れないなどの理由により引渡しができない場合も想定されます。

この場合の対応としては、金銭であれば民法494条1項により、供託するという対応をとることができます。
また、不動産など金銭以外の財産であれば供託することができませんが、民法497条により、裁判所の許可を得て競売に付し、その代金を供託するという対応をとることができます。

相続放棄時に現に手元に占有している遺産については、放棄後も管理の義務を負うこととなるのですが、上記のような対応をとることにより管理の義務を消滅させることが可能です。

なお、上記の競売については、民事執行法に従って裁判所に申立てを行うことにより、実施することとなります(民事執行法195条)。
ただし、競売に付したとしても買い手が付かない場合もあり、その場合には管理の義務が消滅することはありません。
その場合には、その後も手元にある遺産の保管を継続せざるを得ないと考えられます。

では一体いつまで保管しなければならないのか?という問題がありますが、相続権を有する次順位の相続人がいる状況で、私的に遺産を廃棄・処分してしまう対応は避けるべきでしょう。
法律上、違法とされる自力救済に該当するおそれがあるからです。

このような場合の対応としては、自動車であれば撤去の民事訴訟・強制執行を行うこと、その後に空き家となり老朽化した建物であれば市町村に行政代執行による撤去等の要請をすること、次順位の相続人が行方不明であれば裁判所に不在者財産管理人の選任や所有者不明土地・建物の管理命令を申し立てるなど、事案により様々な手続が考えられます。
複雑な法的手続が必要となり、相応の費用がかかることが想定されますし、慎重にご対応いただく必要があると考えられるため、このような問題に直面した場合にはまずは弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。