被相続人が病院や施設で亡くなる例は少なくありません。
この場合、被相続人の死亡時において、未払いの医療費や施設利用料が発生することが多いです。
相続人が相続放棄を検討している場合、被相続人の医療費や施設利用料を支払ってもよいか?という問題があります。

この点、相続放棄とは、被相続人の資産および負債の一切を引き継がないようにするための手続です。
そのため、相続放棄をするのであれば、被相続人の医療費や施設利用料を支払う必要はないのが原則です。

しかし、「病院や施設にはお世話になったので」という理由で、被相続人の医療費や施設利用料を支払いたいと考える相続人もいることでしょう。
この場合、相続人自身のお金で医療費や施設利用料を支払うのであれば、問題はありません。
一方で、被相続人の現金・預金から医療費や施設利用料を支払ってしまうと、相続放棄と矛盾する法定単純承認事由に当たるものとして、あとあと相続放棄の効力が否定されてしまうおそれがありますので、注意が必要です。

なお、被相続人の医療費や施設利用料について、相続人が連帯保証人となっている例もあります。
この場合、その相続人は相続放棄をしたとしても、連帯保証債務として医療費や施設利用料の支払義務を負うこととなります。
このように連帯保証人としての支払をする場合であっても、相続放棄をするのであれば相続人自身のお金で医療費や施設利用料を支払うようにし、被相続人の現金・預貯金には手を付けないようにしましょう。