自分の次の順位の相続人あるいは相続財産清算人に引き継ぐか、引き継ぐ者がいない場合には、自分の財産ときちんと区別してそのまま保管・管理しましょう。

相続放棄において、被相続人の財産の取扱いには、注意が必要です。
処分(費消、名義変更、売却、取り壊しなど)をしてしまうと相続放棄ができなくなるもの、すなわち相続放棄をする場合には受け取れないものとしては、被相続人の手元にあった現金、被相続人名義の預貯金、被相続人名義の自動車、被相続人名義の不動産などがあります。

このような被相続人の資産は、自分が相続放棄した場合には、次の順位の相続人に引き継ぐことになります。
また、すべての相続人が相続放棄をした後、相続財産清算人が選任された場合には、その相続財産清算人へ引き継ぐことになります。

もっとも、相続財産清算人の選任には、数十万円程度の予納金を準備する必要があるため、選任されないことの方が多いです。
そして、相続放棄後に相続財産清算人が選任されないまま、被相続人の資産が手元に残るという状況も少なからず発生しています。

このような場合には、手元にある被相続人の資産は、自分の財産ときちんと区別して、そのまま保管・管理することになります。

現金は、封筒に入れるなどして金庫で保管しておくとよいでしょう。
金額が大きければ、保管用の預金口座を新たに作って入金・保管することが考えられます(自分の財産を完全に区別するために、保管用の預金口座に入れた現金には、一切手を付けないようにします)。
後になって、相続財産清算人が選任されるなどした際に、きちんと引き継ぐためです。

預貯金については、金融機関に被相続人の死亡の連絡をすれば、あとは特に必要な手続はありません。
通帳やキャッシュカードなどが手元にあれば、封筒に入れるなどして保管しておけば無難といえますが、これらを紛失してしまったからといって、特に問題となることはありません。
万が一、相続放棄の前に解約してしまっていた場合には、解約した現金を封筒に入れて金庫で保管するか、保管用の預金口座を新たに作って入金・保管しておくとよいでしょう。

また、相続放棄の時点で手元にある自動車や不動産は、保管・管理をきちんと考える必要があります。
法律上、相続放棄をした後でも、管理の義務はあるからです。

なお、管理の義務を負うのは、相続放棄時に被相続人の資産を現に占有している場合に限られます。
したがって、遠方に居住し被相続人の資産の管理に一切関与していない相続人については、管理の責任を負いません。
一方で、相続放棄時に自動車を現に使用していたり、不動産に現に居住していたりする場合には、相続放棄後も管理の義務を負うこととなります。

この場合、不動産については、相続放棄後も修繕・維持といった管理を行うこととなり、倒壊などの現実的危険性があるのであれば撤去を行うこととなるでしょう。
自動車については、古い車など誰が見ても価値がないものであれば、廃車処分も可能でしょうが、比較的新しい車など売却可能な価値のある自動車であれば、処分が相続放棄において問題となることも考慮しなければなりません。
比較的新しい車の処理としては、例えば、数年間は車庫などで保管して、価値がなくなった頃に廃車処分とすることなどが考えられます。

また、相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てて、相続財産清算人に管理・処分させるとか、相続財産清算人から買い受けた後に廃車や撤去をするなどの対応も考えられます。

相続放棄をお考えの方で、被相続人が持っていたものや被相続人名義のものが手元にあって対応にお困りの方は、当事務所にご相談いただければと思います。