特別受益の成立要件

次の2つの要件を満たす場合に、特別受益が認められます。

①利益を受けた時点における推定相続人(仮に被相続人がその時点で亡くなった場合に法定相続人になる人)であること。
②生計の資本(生活費、住宅購入資金、事業資金などの援助)または婚姻・養子縁組のための贈与・遺贈であること。

特別受益の対象者

利益を受けた時点における推定相続人が対象です。

推定相続人

仮に被相続人がその時点で亡くなった場合に法定相続人になる人のことを、推定相続人と言います。
例えば、父・母・子2人の4人家族で仮に父が亡くなるとすると、母および子2人が推定相続人です。
推定相続人に対する贈与は、特別受益の対象です。

代襲相続人

被相続人の子や兄弟姉妹がすでに亡くなっていた場合、孫や甥・姪が相続人となります。
このような場合の孫や甥・姪のことを代襲相続人と言います。
例えば、被相続人である父から子に不動産の生前贈与があり、そのあと父より先に子が亡くなり、孫が代襲相続人になったとします。
この場合、不動産の生前贈与を受けたのは子であるため、孫が子から受け継いだ不動産は特別受益の対象とはなりません。

養子

養子縁組をしたあとの贈与は、特別受益となります。
これに対し、養子縁組をする前の贈与は、利益を受けた時点では推定相続人ではないため、特別受益とならないのが原則です。
ただし、将来的に養子縁組をすることを前提に先に贈与が行われた場合には、特別受益になると判断される可能性があります。

推定相続人の配偶者や子

推定相続人の配偶者や子に対する贈与については、利益を受けた人自身は推定相続人ではないため、特別受益とならないのが原則です。
ただし、実質的には推定相続人本人に対する贈与と評価される場合には、特別受益になると判断される可能性があります。

特別受益の対象となる贈与・遺贈

生計の資本または婚姻・養子縁組のための贈与・遺贈が対象です。

遺贈

遺言書により遺産を渡すことを遺贈と言います。
遺贈により受け取った財産は特別受益になります。

婚姻のための贈与

例えば、子が結婚するに当たり、親が持参金や嫁入り道具を贈与した場合には、特別受益になります。
しかし、結納金や結婚式の費用は、特別受益にならないと考えられています。

養子縁組のための贈与

例えば、養子縁組の際に、持参金を持たせたり、不動産を贈与したりすれば、特別受益になります。

生活の資本としての贈与

生計の資本としての贈与とは、生活費、住宅購入資金、事業資金などの援助のことを言います。
ただし、特別受益が成立するためには、親族間の扶養義務の範囲を超えていることが必要です。
例えば、子が生活に困窮しているのに対し、親が通常必要となる生活費を援助しても、親族間の扶養義務を果たしたものに過ぎず、特別受益になりません。
また、お小遣いなどの少額の贈与も、特別受益になりません。