持ち戻し免除の意思表示は、被相続人が書面で残していた場合はもちろん、書面化されていない場合であっても、様々な事情を総合的に考慮した結果、持ち戻し免除の意思表示があったものと認められることもあります。
実際には、被相続人が明確に持ち戻し免除の意思表示をしていることは少ないです。
そこで、持ち戻し免除の意思表示の有無は、主に次のような事情を総合的に考慮して判断されることとなります。
□生前贈与・遺贈の内容および金額
□生前贈与・遺贈がなされた動機
□被相続人と受贈者および他の相続人との関係
□被相続人と受贈者の経済状況・健康状況
□他の相続人が受けた贈与の内容と金額、およびこれに対する持ち戻し免除の意思表示の有無
また、次のような事情があった場合には、持ち戻し免除の意思表示が認められやすいです。
□生前贈与・遺贈をした代わりに、被相続人の見返りの利益を受けているとき
□相続人全員に対し、贈与や遺贈をしているとき
□家業を相続させるために、相続分以上の財産を相続させる必要があるとき
□自立して生活することが困難な相続人に対し、生活保障のために生前贈与・遺贈がなされているとき
なお、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物または敷地について遺贈または贈与をしたときは、持ち戻し免除の意思表示があったものと推定されます。
特定の相続人が生前贈与・遺贈で特別受益を受けた場合には、その相続人の相続分を特別受益の分だけ減らす調整がなされ、これを持ち戻しと言います。
もっとも、持ち戻し免除の意思表示(被相続人が特別受益の持ち戻しをしなくてもよいという意思表示をすること)があれば、遺留分の規定に反しない限り、持ち戻しをしなくてもよいことになります。
持ち戻し免除の意思表示が認められ得るかどうかは、複雑で専門的な判断が必要となりますので、相続に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。