特別受益を受けた相続人の相続分を特別受益の分だけ減らすことを、特別受益の持ち戻しと言います。
そして、被相続人が特別受益の持ち戻しをしなくてよいという意思表示をしていた場合には、遺留分の規定に違反しなければ、持ち戻しをしなくてよいとされます。
このことを、持ち戻し免除と言います。
特定の相続人が被相続人から生前贈与や遺贈を受けた財産を、特別受益と言います。
特別受益は、遺産分割に先立って相続財産を前渡しするという性格があります。
そこで、他の相続人との公平を図るために、持ち戻し(特別受益を受けた相続人の相続分を特別受益の分だけ減らすこと)によって、調整がなされるのです。
もっとも、被相続人が持ち戻し免除の意思表示(被相続人が特別受益の持ち戻しをしなくてよいという意思表示をすること)をしていれば、他の相続人の遺留分を侵害しない限りにおいて、持ち戻しによる調整をしなくてもよいことになります。
被相続人が持ち戻し免除の意思表示をする際には、意思表示の方法には制限がなく、生前にすることもできますし、遺言書によってすることも可能です。
また、持ち戻し免除の意思表示は、被相続人が書面に残した場合はもちろん、明確に書面化されていない場合であっても、様々な事情を考慮した結果、被相続人が持ち戻し免除の意思表示をしていたものと認められることもあります。
なお、2020年4月から施行の改正民法では、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物または敷地について遺贈または贈与をしたときは、持ち戻し免除の意思表示があったものと推定される、という規定が設けられました。