1 背景

50代の男性から、遺産分割に関するご相談をいただきました。
お客様の父(被相続人)が死亡し、相続人はお客様を含む兄弟姉妹3人でした。

兄弟姉妹の1人(長男)は、被相続人の世話をし、被相続人の預金を管理している状況でした。
お客様は、長男との遺産分割協議を試みましたが、話し合いが難航したことから、弁護士を入れて進めたいとのことで、当事務所にご依頼いただくこととなりました。

2 当事務所の活動と結果

当事務所の弁護士が、被相続人の預金の取引履歴を調査すると、被相続人の死亡直前期に、多額の払戻が多数回にわたって行われていることがわかりました。
そして、当事務所の弁護士は、これらの預金の払戻について、金融機関から払戻請求書の開示を受けたところ、長男による払戻が行われていたことがわかりました。

そこで、当事務所の弁護士は、長男に対し、払い戻した多額の預金の使途について、質問状を送付し、問いただしました。
これに対し、長男は、不合理な説明に終始しました。
そこで、当事務所の弁護士は、話し合いでの解決は難しいと判断し、お客様の同意を得たうえで、長男に対し、使い込んだ預金の返還を請求する訴訟を提起しました。

長男は、訴訟に至って弁護士を立ててきましたが、払い戻した預金の使途について、同様の不合理な説明を繰り返しました。
これに対し、当事務所の弁護士は、まずは、被相続人が入院・入所していた病院・施設のカルテ・介護記録を取り寄せ、長男による預金の払戻が行われた当時、被相続人の判断能力が大きく衰えていたことを立証しました。
そのうえで、当事務所の弁護士は、長男による預金の使途の説明が不合理であることを、丁寧に主張・立証していきました。
その結果、長男の説明のうち、大部分が裁判官によって否認され、520万円を返還させる内容での和解を勝ち取ることができました。

3 所感

預金の使い込みの事案では、払戻が行われた当時の被相続人の判断能力と、払い戻された預金の使途に関する相手方の主張の合理性がポイントとなることが多いです。
被相続人の判断能力については、当時の被相続人の要介護認定の状況、病院・施設のカルテ・介護記録などが手掛かりとなります。
また、相手方が主張する預金の使い道について、個別的に緻密な検討を加え、粘り強く丁寧に反論を加えていくことが大切です。
弁護士の主張・立証活動によって、相手方の言い訳をどこまで切り崩していけるかが勝負の分かれ目となります。