1 背景
負債を抱えて亡くなった被相続人の母と弟から、相続放棄に関するご相談をいただきました。
被相続人には離婚した元妻との子がいましたが、被相続人の母および弟において音信不通の状況でした。
被相続人の母と弟が相談に来られた時点では、相続権は第1順位の相続人である被相続人の子にありました。
しかし、被相続人の子が相続放棄をした時点で、被相続人の母に相続権が移転する関係にあったため、早々に被相続人の子に相続放棄をしてもらったうえで、被相続人の母と弟が順次相続放棄をし、被相続人の負債を引き継がないことを確定させたいとのご希望でした。
当事務所の弁護士は、被相続人の母と弟から、被相続人の子の住所を調べたうえ郵便で相続放棄を促すことと、その後に被相続人の母と弟の相続放棄の手続を取ることをご依頼いただきました。
2 当事務所の活動と結果
当事務所の弁護士は、速やかに、被相続人の子の戸籍謄本から住民票上の住所を調査しました。
そして、被相続人の子に対し、「被相続人が負債を抱えて亡くなったから、被相続人の子である貴殿が負債を相続する関係にある。
被相続人の母と弟は相続放棄をしようと思っているところ、まずは貴殿に相続放棄の手続を取っていただきたい」との趣旨の郵便を送付しました。
しばらくすると、被相続人の子が相続放棄の手続を取ったため、被相続人の母のもとに債権者からの督促が来ました。
当事務所の弁護士は、債権者に対し、すぐに、「被相続人の母と弟は、順次相続放棄をする予定であるから、支払の請求をしないように」との趣旨の通知書を送付しました。
そのうえで、被相続人の母と弟の相続放棄の手続を、順次進めていきました。
そして、被相続人の母と弟の相続放棄の申述が受理されたあと、債権者に対して相続放棄の手続が完了した旨を通知し、解決となりました。
3 所感
相続放棄は、相続権のない者が行うことはできません。
したがって、先順位の相続人が相続放棄をしなければ、後順位の相続人は相続放棄をすることができません。
先順位の相続人と面識がない場合や音信不通の場合などには、後順位の相続人としては、何もしなければ、先順位の相続人が相続放棄をするのかどうか、相続放棄をするとしても、いつ手続を取るのかなどが分からないという状況に置かれます。
その結果、いつ自分に相続権が移って相続放棄ができるようになるのか、何年も後に債権者から督促状が送られてきて、その時になって相続放棄をするまでは、負債を相続してしまう心配の種が消えないのかという不安を抱え続けることになります。
このような場合には、弁護士に依頼して先順位の相続人の住所を調査し、郵便で先順位の相続人に相続放棄を促すという対応が有効です。
郵便での連絡が取れれば、負債の相続を黙って受け入れる人は少ないですから、相続放棄の手続を取ってもらえることが多いです。
その結果、後順位の相続人に円滑に相続権が移転し、すぐに相続放棄を行うことで、負債を引き継いでしまう不安から早期に解放されるのです。
相続放棄にあたって、先順位の相続人と面識がない場合や音信不通の場合など、すんなりと手続を進められないケースでは、お早めに相続放棄に詳しい弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。