※本件は、令和元年7月以前の解決事例です。遺留分減殺請求の制度は、令和元年7月1日施行の民法改正により、遺留分侵害額請求の制度に変更されています。
1 背景
60代の女性2名と60代の男性1名から(依頼者3名)、亡くなった3名の母親(被相続人)の遺産に関する遺留分減殺請求についてご相談いただきました。
法定相続人としては、被相続人の子どもがあと1人いました(相手方)。
そして、相手方に全ての遺産を単独相続させるという内容の遺言書(公正証書)が被相続人によって作成されていました。
遺産のほとんどが不動産(複数あり)であり、総額が約3500万円相当でした。
依頼者3名は、すでに相手方に対して遺留分減殺請求調停を申し立てていましたが、相手方が遺産である不動産に抵当権を設定して借入をしようという動きが見られるとして、当事務所に相手方の動きへの対応をご相談いただきました。
当事務所の弁護士は、相手方が遺産である不動産に抵当権を設定できないようにするために、処分禁止の仮処分(暫定的に対象財産の売却や担保設定を禁じる裁判所による処分)を申し立てたうえで遺留分減殺請求調停を進めていくことを提案し、以後の対応をご依頼いただくこととなりました。
2 当事務所の活動と結果
当事務所の弁護士は、ご依頼いただいたあと、直ちに遺産である不動産について、処分禁止の仮処分を裁判所に申し立て、仮処分を認容する決定を受けました。
そして、相手方の遺産である不動産への抵当権設定を封じた中で、遺留分減殺請求調停を進めていきました。
遺留分減殺請求調停では、相手方も弁護士を立てて臨んできたため、双方弁護士を通じての調停進行となりました。
そして、依頼者の1名については、被相続人から相当額の不動産の生前贈与を受けていたことから、当該依頼者からの請求は認められませんでしたが、他の2名の依頼者は、遺留分として合計約948万円相当の遺産である不動産を取り戻すことに成功しました。
3 所感
特定の相続人に全ての遺産を相続させるという内容の遺言書は、よく見られる類型の遺言書と言えます。
このような内容の遺言書が作成された結果、遺産を相続できない相続人は、遺留分侵害額請求をすることで、一定割合の遺産相当額を請求することが可能となります。
当事務所では、遺留分侵害額請求の案件への対応実績が蓄積されておりますので、お困りの方がいらっしゃいましたら、是非お気軽にご相談いただければと存じます。
また、本件のように仮処分などが必要となる事案につきましても、迅速かつ丁寧なサポートをご提供させていただいております。