1 はじめに
遺産の内容を開示してくれない相続人がいるために、遺産分割の話し合いが進められなくなるというケースがあります。
ここでは、遺産に内容を開示してくれない相続人がいる場合に遺産の内容を把握するための方法や、遺産分割の手続の流れについて、ご説明いたします。
2 遺産の開示を求める
まずは、遺産の内容を開示してくれない相続人に対し、開示するように強く要求していくことが考えられます。
開示しなければ裁判所の手続に移行すると通告してプレッシャーをかける、できれば弁護士からその旨の通知書を送付する対応が基本であると考えられます。
この点、遺産の内容を強制的に開示させる法的な手続はありません。
また、遺産の内容の開示を受けたとしても、本当にすべての遺産が開示されているか?という問題もあります。
そこで、ご自身の側でも遺産の調査を行う必要があるケースも多いでしょう。
3 遺産の調査を行う
主な遺産の調査方法は、以下のとおりです。
遺産の調査は手間と時間がかかることも多いため、弁護士に調査を依頼することも検討されるとよいでしょう。
(1)不動産
被相続人が居住していた家については、持ち家であれば法務局で登記簿謄本を取得し、市町村役場で固定資産評価証明書を取得することにより、その不動産の情報を調べることができます。
また、被相続人の住所地および周辺の市町村など、被相続人保有の不動産が所在する可能性のある役場で名寄帳(固定資産課税台帳)の交付を申請することにより、その市町村に存在する不動産の全てを調査することができます。
(2)預金
どの金融機関に預金口座があるか分かっているのであれば、その金融機関に対し名寄せ(残高証明書の交付)を申請します。
これにより、その金融機関の全支店の預金口座の有無と残高を確認することができます。
また、その他の金融機関にも預金口座がある可能性があるため、生活圏内の主要な金融機関の全てで名寄せの申請をするのがよいでしょう。
そして、存在することが判明した預金口座について取引履歴の開示を申請すれば、入出金の履歴を確認することができます。
これにより、証券会社での取引があることが把握できたり、生命保険に加入していることが分かったり、他の相続人による預金の使い込みが判明したりすることもあります。
(3)株式・投資信託
株式や投資信託は、取引のある証券会社が分かれば、取引情報の開示を求めることにより保有している株式・投資信託を調査することができます。
上記(3)で調査した預金の取引履歴に証券会社の入出金の履歴があれば、その証券会社での取引がある可能性が高いでしょう。
また、証券保管振替機構(通称:ほふり)に対し登録済加入者情報の開示請求を行うことにより、上場している銘柄に限りその銘柄にかかる口座が開設されている証券会社を確認することができます。
(4)その他
その他、被相続人と同居していた人や入居施設の担当者など、被相続人に近しい人が遺産の情報を知っていることも多いです。
このような人たちへの聞き取りも、有効な調査方法となり得ます。
4 遺産分割の流れ
遺産分割は、以下のような流れで解決します。
複雑な交渉・手続対応となるため、専門家である弁護士にお任せいただけば安心です。
(1)遺産分割協議
遺産の開示を受け、または調査により遺産分割が可能なのであれば、まずは協議(話し合い)による解決を目指すのが通常です。
話し合いがまとまれば、遺産分割協議書を作成のうえ、名義変更などの分配を行えば解決となります。
(2)遺産分割調停
話し合いによる解決が難しい場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
遺産分割調停では、調停委員を仲介者とする話し合いのあっせんが行われます。
遺産分割調停の中で相続人全員が遺産分割の条件に合意すれば、調停成立となります。
家庭裁判所から合意内容が記載された調停調書が交付されますので、調停調書に記載のとおりに名義変更などの分配を行います。
(3)遺産分割審判
遺産分割調停による合意ができない場合には、遺産分割審判の手続に移行します。
遺産分割審判では、各相続人の主張内容や証拠資料を踏まえ、裁判官が遺産分割の内容を指定する審判を下します。
5 弁護士にご相談ください
当事務所では、相続問題に関するご相談・ご依頼を多数お受けしております。
遺産の開示要求を含む交渉、遺産の調査、遺産分割の手続の代理対応も承っております。
遺産の内容を開示してくれない相続人がいる場合の遺産分割についても解決実績がございますので、当事務所の経験豊富な弁護士にお気軽にご相談いただければと存じます。