相続人の中に認知症の人がいる場合に、遺産分割はどのようにすればよいか?といった問題があります。
遺産分割は相続人全員で行わなければならず、各相続人に判断能力があることが必要です。
したがって、認知症で判断能力が失われた相続人がいる場合には、そのままでは遺産分割を成立させられないのが原則となります。
しかし、このような場合でも、「成年後見制度」を利用することで、遺産分割を進めることが可能となります。
成年後見制度とは、家庭裁判所に申立てをして、認知症などで判断能力が失われた人に代わって財産管理や身上監護を行う成年後見人を選任してもらうための手続です。
成年後見人には親族が選任されるのが通常ですが、遺産分割が必要な場合には弁護士などの専門職が選任されることが多いです。
成年後見人の選任については、申立てから選任まで1~2か月かかるのが通常です。
そして、成年後見人が選任されたあと、成年後見人を含めて遺産分割協議を行うことになります。
なお、遺産分割が終了したあとは、その相続人が亡くなるまで、成年後見人がその相続人の財産管理や身上監護を行っていくこととなります。
また、遺産分割調停では、認知症の相続人の特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てることができます。
特別代理人は、認知症の相続人を代理して遺産分割調停の手続を進めることとなります。
なお、特別代理人は、その遺産分割調停の手続においてのみ、その相続人を代理するのであり、遺産分割終了後の財産管理や身上監護は行いません。
遺産分割の成立だけを目的とするのであれば、遺産分割調停と特別代理人選任の申立てを行うことが迅速な解決につながることもあります。
なお、特別代理人の選任を申し立てる際には、遺産分割調停1件あたり10万円程度の予納金を家庭裁判所に納める必要があります。
最近では高齢化社会の進行に伴い、相続人の中に認知症の人がいるといったケースが増えています。
認知症の相続人がいる場合の遺産分割についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、相続問題に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
遺産分割についてはこちらもご覧ください
●遺産分割でお困りの方
●遺産分割の流れ
●相続調査について
●相続人調査について
●相続財産調査について
●遺言の有無の調査について
●負債の調査について
●遺産分割協議と遺産分割協議書
●遺産分割調停と遺産分割審判
●遺産分割に関係する訴訟について
●現物分割・代償分割・換価分割のメリットとデメリット
●遺産分割を弁護士に依頼するメリット
●行方不明や音信不通の相続人がいる場合の遺産分割
●認知症の相続人がいる場合の遺産分割
●相続人に未成年者がいる場合の遺産分割
●婚外子がいる場合の遺産分割
●面識のない相続人がいる場合の遺産分割
●相続人が多数いる場合の遺産分割
●刑務所に入所中(服役中・在監中)の相続人がいる場合の遺産分割
●相続人に異父/異母兄弟姉妹がいる場合の遺産分割
●代襲相続が発生している場合の遺産分割
●遺産分割で相手方(他の相続人)に弁護士が付いた場合の対応
●家庭裁判所から遺産分割調停の申立書が届いた場合の対応
●遺産を独り占めしようとする相続人がいる場合の遺産分割
●強硬な主張・要求をしてくる相続人がいる場合の遺産分割
●連絡を無視・拒否する非協力的な相続人がいる場合の遺産分割
●相続人同士が不仲または疎遠な場合の遺産分割
●遺産分割後に遺言書が見つかった場合の対応
●遺産分割後に新たな相続人が判明した場合の対応
●遺産分割後に新たな遺産が見つかった場合の対応
●特別の寄与の制度について