1 高齢の親の「囲い込み」問題

高齢の親に対する「囲い込み」とは、高齢の親を持つ子が親と他人との交流を妨げることをいいます。

このような囲い込みが行われた場合、親は高齢のため経済的・身体的に弱っており、状況を正確に伝えることができず、外部の親族に助けを求めることが困難です。
そのため、社会的に解決が難しい問題の一つとされています。

このような囲い込みは、預金の使い込みが発覚するのを防止するために行われることもあります。

2 親族との面会妨害への対応

このような囲い込みによって面会の妨害が行われた場合に、親族がとりうる措置として、2つの法的な手段があります。

まず、面会の妨害を禁止する仮処分を申し立てることです。
例えば、横浜地方裁判所平成30年7月20日決定では、長男が長女と両親の面会を妨害している事案について、「長男は両親との面会を禁止してはならない」とする仮処分決定がされました。
この裁判所の判断は、長女の面会交流をする権利を肯定しているところが重要な点となります。

次に、面会交流を妨害されたことにより、精神的苦痛を被ったとして、損害賠償(慰謝料)を請求をすることが考えられます。
東京地方裁判所令和元年11月22日判決では、母親との自由な面会を妨害した事案について、100万円の慰謝料の支払いが命じられています。
この判例においては、母親と面会することが法的な保護に値する利益であると判断されています。

このように、裁判実務においては、親族と面会をすることが法的に保護されており、それが妨害された場合、妨害の禁止や慰謝料の支払いを請求することが認められています。

3 望んでいない内容の遺言書を書かせた場合の対応

一度遺言書が作成された場合、決して認められないというわけではありませんが、裁判により遺言書の有効性を否定することは困難なことが多いです。

望まない内容の遺言書が残された場合には、民法1022条により、遺言書を訂正することができます。
民法1022条によれば、遺言者は、いつでも遺言書を撤回することが認められています。
この規定を活用して、高齢の親に対して、遺言書の訂正を促すことができるのです。

4 預金の使い込みの予防と取り戻し

囲い込みをしている子による預金の使い込みが発覚した場合には、次のように対応することが考えられます。

まず、生前に使い込みが発覚した場合には、高齢の親が請求者となって不当利得または損害賠償請求をすることになります。

その際、高齢の親の判断能力が不十分なときには、裁判所に対し、高齢の親について後見開始の申し立てをすることにより、成年後見人が代わって請求を行うことになります。

一方で、死後に使い込みが発覚した場合には、その使い込まれた金額について、法的には不当利得返還請求権または損害賠償請求権が発生していることになります。
そして、これらの請求権について、相続人が相続分に従って分割取得することになります。
そのため、死後、相続人がこれらの権利を行使し、使い込みを行った者に対して、返還を求めていくことになります。

このように、使い込みが発覚した場合には、金銭による解決を図ることが考えられます。

もっとも、事前の対策として、弁護士等の法律専門職を成年後見人に選任することによって、私的な財産の流用を予防することができます。
成年後見人が選任された場合、成年後見人が被後見人(本人)の財産を管理することとなり、その他の者が財産を管理することはできなくなります。

さらに成年後見人には、財産の使途について裁判所に報告する義務があります。
このように、成年後見人が選任された場合には、裁判所の監督のもとに成年後見人が財産を管理することになるため、囲い込みをしている子による高齢の親の預金の使い込みを有効に予防することができます。

5 虐待への対応

高齢の親に対する虐待には様々な態様のものが存在します。
殴る、蹴るといった身体的な虐待のほかに、言葉による侮辱といった心理的な虐待、必要な生活費を渡さないといった経済的虐待、本人が同意しない性的行為を行うといった性的虐待、一切の介護をせず世話を放棄するというネグレクト、といったものがあります。
このような虐待は、家庭内で行われるものはもちろんのこと、施設で行われるものもあります。

虐待は、到底許されるものではなく、怪我を負わせた場合等、法的には刑事罰の対象となるものもあります。

虐待に気付いた親族は、警察や行政機関(地域包括支援センター)に連絡をして、適切な処置をすることが望まれます。
具体的には、高齢の親と虐待を行っている人物を別居させて距離を取ることや、高齢の親を施設に入所させることが考えられます。

6 弁護士にご相談ください

上記のように、高齢の親の「囲い込み」問題には複雑な法的問題が絡んでおり、迅速に対応する必要性があります。
弁護士であれば、このような問題を解決できる可能性があり、法的な条件を満たせば、迅速に対応することができます。
「囲い込み」問題にお困りの方は、当事務所の弁護士までご相談ください。

7 ご相談・ご依頼いただく場合の弁護士費用

相談料

1時間 1万1000円(税込)

ただし、預金の使い込みに関するご相談は、初回無料です。

依頼料

①仮処分の申立て

着手金 33万円(税込)
報酬金 66万円(税込)

②後見開始(成年後見人の選任)の申立て

着手金 22万円~33万円(税込)
報酬金 0円

③預金の使い込みに対する不当利得返還請求・損害賠償請求(交渉・訴訟)

着手金 27万5000円(税込)
報酬金 (獲得額が1000万円以下の場合)
16.5%(税込)
(獲得額が1000万円を超える場合)
11%(税込)+55万円(税込)

※交渉から引き続き訴訟をご依頼いただく場合は、訴訟分の着手金として13万7500円(税込)が追加となります。
※預金の使い込みに対する不当利得返還請求・損害賠償請求に附随して、仮差押え・仮処分、強制執行を行う場合には、別途、着手金が11万円~22万円(税込)、報酬金が11万円~22万円(税込)発生します。

(弁護士・荒居憲人)

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