今回のコラムでは、遺産分割に関する最近の重要な法改正について、ご紹介させていただきます。
民法が改正されたことにより、令和5年(2023年)から遺産分割をするにあたっては特別受益および寄与分の主張に期限が設けられることになりました。
現在の法律では、遺産分割を行うには期限がなく、特別受益および寄与分についても、過去の分をいつまでも遡って主張することができます。
もっとも、遺産分割が長期化すると、遺産分割の当事者である相続人が死亡する可能性があり、その結果さらに相続が発生するため、権利関係が複雑になります。
このような複雑な権利関係になっている上に、特別受益や寄与分の問題が加わると、相続分の算定が極めて困難なものになりかねません。
そこで、改正後は、家庭裁判所の手続きを用いて遺産分割を行う場合、特別受益および寄与分については、相続開始の時から10年以上経過した後には主張することができないものとされました(なお、特別受益および寄与分が発生した時期については、これまで通り、時期的な制限はありません)。
これに対し、家庭裁判所の手続きによらない遺産分割協議を行う場合には、相続人間での合意があれば、相続開始から10年以上経過した後であっても、特別受益や寄与分の主張をすることは可能です。
このように、遺産分割協議が10年間でまとまらない場合には、その後、家庭裁判所で遺産分割調停等を行っても、特別受益および寄与分を主張することができなくなるため、これらの主張をするのであれば、早めに家庭裁判所での手続きに移行するのがよいでしょう。
(弁護士・下山慧)