相続に関連するトラブルの一つとして、高齢親の預金を子が使い込んだり、高齢親の不動産を子が勝手に売却したり、登記名義を変更したりする例があります。
高齢親(被相続人)の死亡後にこのような財産の奪取・処分が判明した場合には、奪取・処分を行った子と他の相続人との間で返還・賠償をめぐる紛争が発生することが多いです。
また、高齢親の生前にこのような財産の奪取・処分が行われる危険性を察知した場合には、高齢親の財産管理を行う成年後見人を選任し、高齢親の財産を不当な奪取・処分から守ることなどが対策として考えられます。
このような高齢親の財産の奪取・処分は、施設に入居する認知症の高齢者の子が、親と他の親族とを会わせない「囲い込み」の中で行われることが少なくありません。
掲題の横浜地方裁判所の事案は、両親の財産をめぐる長男・長女間の兄妹トラブルのケースなのですが、長女は長男が両親の財産を処分してしまう動きがあることを察知し、両親と話し合おうとしたものの長男が反対したため、施設が面会を認めなかったというものです。
長女は両親の財産を守るために成年後見人の選任を横浜家庭裁判所に申し立てていたのですが、長男が協力しないために、手続の進行が妨げられている状況でした。
2018年9月30日の新聞では、上記の事案において、長女が長男に両親との面会を拒まれているのは不当であるとして、裁判所に妨害を禁止するように求めた仮処分手続で、横浜地方裁判所が長男と施設側に「長女と両親との面会を妨害してはならない」と命じる決定を出したことが報じられました。
決定は同年6月27日付けで、長男は「長女と面会させないのは、両親自身の意向である」と主張し、決定に異議を申し立てていましたが、横浜地方裁判所は同年7月に「面会できない状況には、長男の行為が影響している」、「両親の意思に明確に反し、平穏な生活を侵害するなどでない限り、長女は両親と面会する権利がある」と判断し、異議申立てを退けました。
このような高齢者の「囲い込み」の問題は近年増加しており、今回の横浜地方裁判所の決定は解決の道を開く画期的な決定であると評価されています。
当事務所でも、高齢親の「囲い込み」の問題や、預金・不動産等の財産の奪取・処分の問題に関するご相談・ご依頼を取り扱っております。
今回の横浜地方裁判所の決定例も参照しながら、個々の事案に適した解決策をご提案させていただきますので、高齢親の財産の問題についてお困りのことがありましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。
(弁護士・木村哲也)