以前のコラムで、遺産分割には時効という期限はないものの、長年塩漬けにしていると紛争の複雑化・深刻化を招いてしまったり、手続上の労力・費用の負担が増大してしまったりすることが考えられるため、早期の解決が望ましいことをご説明させていただきました。
今回は、先のコラムとは異なる観点から、遺産分割の早期解決についてご説明させていただきたいと思います。
異なる観点とは、相続税の申告期限との関係です。
被相続人が残した遺産が多い場合には、相続税が課税されます。
この相続税は、たとえ遺産分割協議が終わっていなくても、被相続人が死亡してから10か月以内に申告書を提出し、申告しなければならないものとされています。
こうした相続税の10か月の申告期限を過ぎてしまうと、配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)や小規模宅地等についての課税価格の特例(租税特別措置法69条の4)といった相続税を大幅に節税できる制度の適用を受けられなくなるというデメリットがあります。
また、無申告加算税や延滞税といった余分な税金も納めなければならないこともあります。
このように、被相続人が残した遺産が多く、相続税の課税対象となる場合には、10か月の申告期限も見据えて、早期に遺産分割の話し合いを進めていかなければなりません。相続税の課税対象となるのは、遺産の額が、相続税基礎控除額(現在は、3000万円+法定相続人の数×600万円)を超える場合です。
このラインを超える規模の遺産があり、相続税の課税対象となる場合には、迅速な対応が必要となってくるのです。
そして、分割対象となる遺産が多額であるほど、事案が複雑となり、慎重な判断・対応が求められることが多いと言えます。
そこで、被相続人の方が死亡して遺産分割の問題が発生したときは、できるだけ早く法律の専門家である弁護士にご相談いただければと存じます。
当事務所では、相続問題に関する多数のご相談・ご依頼実績がございますので、是非お気軽にご利用いただければと存じます。
(弁護士・木村哲也)