形式違反による遺言無効とは?
遺言書が要件を満たしていない場合には、形式違反として無効となることがあります。
【遺言書の要件についてはこちら】
●遺言に関する基礎知識
形式違反による遺言無効は、理論上、自筆証書遺言の場合でも公正証書遺言の場合でも発生し得るものです。
しかし、公正証書遺言は、法律の専門家である公証人(多くが元裁判官・元検察官)が作成し、作成過程において要件を満たすことが厳重にチェックされます。
そのため、公正証書遺言の場合には、形式違反による遺言無効が発生することは、ほとんどありません。
形式違反による遺言無効は、実際には、自筆証書遺言の場合に問題となります。
以下では、自筆証書遺言が形式違反により無効となった事例と、ならなかった事例をご紹介させていただきます。
自筆証書遺言が無効となった事例
①遺言者の手に配偶者が添え手をして書かせた事例。
②遺言書の本文がタイプライターで作成され、自書による署名・押印がなされた事例。
③日付が「吉日」と書かれた事例。
①については、実質的には添え手をした人が書いたと評価されるため、「自書」とは言えないと判断されました。
②については、タイプライターによる作成は、「自書」の要件を欠くと判断されました。
この点、遺言者本人がパソコンなどで作成したのであれば、本人の意思が反映されているから「自書」の要件を満たすのではないか?という反論もあり得ます。
しかし、「自書」が要件とされるのは、筆跡により遺言者本人が記載したかどうかを判断できるという趣旨もあるため、無効とせざるを得ません。
「自書」とは、自ら筆記具(ペン、万年筆、毛筆など)で書くという意味なのです。
③については、日付の記載は年月日まで特定できる必要があるとされているため、「吉日」という記載では無効であると判断されました。
自筆証書遺言が無効とならなかった例
①カーボン用紙の複写により作成された事例。
②日付が「還暦の日」と書かれた事例。
①については、筆跡により遺言者本人が記載したかどうかが判断できることから、有効であると判断されました。
②については、「還暦の日」という記載から年月日まで特定できることから、有効であると判断されました。
しかし、これらの事例は、裁判で争った果てに裁判所が最終的に有効という判断を下したものです。
遺言書の有効性をめぐる紛争を回避するためには、このような形で遺言書を作成することはやめるべきです。
遺言無効事件についてはこちらもご覧下さい
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●遺言無効確認請求訴訟を起こされた場合の対応