法務局の自筆証書遺言保管制度を利用した場合、「関係遺言書保管通知」と「死亡時通知」という2種類の通知が発せられることがあります。
自筆証書遺言の内容が実現されるためには、相続人、受遺者、遺言執行者等の関係者に自筆証書遺言が保管されていることを知ってもらう必要があり、関係者が自筆証書遺言の内容を知らなければなりません。
それらを確保するために、関係遺言書保管通知と死亡時通知という2種類の通知制度が設けられています。
なお、関係遺言書保管通知と死亡時通知は、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用した場合に限られ、公証役場で作った公正証書遺言や自宅で保管している自筆証書遺言については、このような通知の制度はありません。
関係遺言書保管通知
遺言者が死亡したあと、遺言書が法務局に保管されている事実があるかどうかについて、誰でも法務局に確認をし、遺言書の保管の有無を証明する書類(遺言書保管事実証明書)の交付を求めることができます。
また、遺言者が死亡したあと、法務局に自身が関係する遺言書が保管されていることが分かった場合には、法務局で遺言書を閲覧し、遺言書の画像情報等を記載した証明書(遺言書情報証明書)の交付を求めることができます。
そして、遺言書の閲覧、遺言書情報証明書の交付が行われた場合には、法務局から相続人、受遺者、遺言執行者等の関係者に対し、関係する遺言書が保管されている旨が通知されます。
これを「関係遺言書保管通知」と言います。
なお、遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付を受けた者など、すでに関係遺言書の保管の事実を知っている者に対しては、関係遺言書保管通知を省略するものとされています。
自筆証書遺言の存在を一部の相続人等しか知らない場合、その他の相続人等が自筆証書遺言の存在を知ることは難しいため、このような関係遺言書保管通知が行われます。
関係遺言書保管通知により、すべての相続人等が自筆証書遺言の存在を知ることとなり、他の相続人等に自筆証書遺言のことを知らせないまま、黙って執行してしまうようなことが起こらないようになっています。
この点、自筆証書遺言の場合には、遺言者の死亡後、原則として、家庭裁判所で検認の手続を行う必要がありますが、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用した場合には、検認は不要です。
家庭裁判所の検認の手続では、相続人全員を呼び出してから自筆証書遺言の検認を行うため、相続人全員が遺言書の存在を知ることが可能です。
関係遺言書保管通知は、家庭裁判所による呼び出しがない代わりに、法務局が相続人等に自筆証書遺言の存在を知らせているものと理解することができます。
関係遺言書保管通知に記載される情報は、①遺言者の氏名、②遺言者の生年月日、③自筆証書遺言が保管されている法務局の名称、④保管番号です。
自筆証書遺言の本文の内容は記載されませんので、本文の内容を確認したい場合には、別途、法務局で遺言書の閲覧、遺言書情報証明書の交付を受ける必要があります。
死亡時通知
死亡時通知とは、法務局が遺言者の死亡の事実を確認した場合に、あらかじめ遺言者が指定した者に対し、遺言書が保管されている旨を通知することを言います。
なお、通知先として指定できるのは、相続人、受遺者、遺言執行者等の関係者のうち、1名だけです。
法務局が遺言者の死亡の事実を把握する仕組みとしては、法務局から遺言者の氏名、生年月日、本籍および筆頭者の氏名が市区町村役場に提供され、市区町村役場から遺言者の死亡の事実が法務局に共有されることとなっています。
このような法務局と市区町村役場との連携により、法務局から死亡時通知を発することが可能となっているのです。
指定された者に通知される内容は、関係遺言書保管通知と同じく、①遺言者の氏名、②遺言者の生年月日、③自筆証書遺言が保管されている法務局の名称、④保管番号です。
死亡時通知は、遺言者が相続人等の誰にも自筆証書遺言の存在を知らせていない場合に利用することにより、自筆証書遺言が発見されないまま遺産分割が進められてしまうことを防止することができます。
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