相続人の中に認知症で判断能力が失われた人がいる場合、そのままでは遺産分割をすることができません。
遺産分割をするにあたっては、その前提として、自分の意思を伝えたり、自分で自分の財産を管理したりできなくてはなりません。
ところが、認知症の人はこれらのことができないので、認知症の人との間で遺産分割をしても、認知症の人の意思が正確に反映されているとはいえません。
このようなことから、相続人の中に認知症の人がいる場合に行った遺産分割は無効となります。
これを避けるためには、認知症の方に代わって遺産分割協議を行うべく、裁判所に成年後見人選任の申立てをする必要があります。
成年後見人というのは、認知症などにより自身で財産の管理をすることができなくなった人の代わりに財産管理をしたり、重要な契約を行ったりする人を指します。
そして、裁判所から選任された成年後見人が、認知症の人の代わりに遺産分割協議に参加することで、初めて遺産分割をすることができるようになります。
また、遺産分割調停では、認知症の相続人の特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てることができます。
特別代理人は、認知症の相続人を代理して遺産分割調停の手続を進めることとなります。
遺産分割の成立だけを目的とするのであれば、遺産分割調停と特別代理人選任の申立てを行うことが迅速な解決につながることもあります。
なお、特別代理人選任の申立てを行う際には、遺産分割調停1件あたり10万円程度の予納金を家庭裁判所に納める必要があります。