遠方の家庭裁判所で遺産分割の調停や審判が行われる場合、電話会議システムという方法を用いることができます。
電話会議システムを利用して調停や審判が行われる場合には、実際に調停や審判が行われている家庭裁判所へ出頭したものと扱われますので、交通費や時間をかけてわざわざ遠方の家庭裁判所に出頭する必要はありません。

電話会議システムとは、あらかじめ決められた調停や審判の日時に、裁判所から当事者に電話をして、裁判所と当事者を電話でつないで、調停や審判の手続を進める方法です。

電話会議システムを利用した遺産分割の調停では、基本的に、裁判所にいる調停委員と当事者の一方との間、裁判所にいる調停委員と電話でつないだもう一方の当事者との間で、それぞれ交互に話をしながら進めていきます。
また、遺産分割の審判では、裁判所には裁判官と当事者の一方がいて、もう一方の当事者に電話をかけて、三者間で話をしながら手続を進めていきます。

実務上の運用では、本人確認と家事事件手続の非公開性を理由に、代理人の弁護士の事務所に電話をつなぐ場合のほかは、他の家庭裁判所に電話をつなぐ方法でのみ、電話会議システムの利用を認めています。
そのため、弁護士に依頼しない場合には、最寄りの家庭裁判所に出頭する必要があります。
また、電話会議システムを利用するためには、調停や審判が行われる家庭裁判所に対して、電話会議システムを利用することを希望する旨の上申書を提出する必要があります。

この点、弁護士に依頼すれば、上申書の提出も弁護士に任せた上で、最寄りの家庭裁判所に出頭する必要もなく、依頼した弁護士の事務所の電話を使って、弁護士と一緒に、電話会議システムを利用して調停に参加することができます。
なお、審判の場合には、基本的に、弁護士のみが電話会議システムを利用して参加することになります。
もちろん、電話会議システムを利用するわけですから、弁護士の交通費や日当が発生することもありません。