当事務所の弁護士は、これまでに、多数の相続放棄に関するご相談・ご依頼をお受けして参りました。
相続放棄の手続は、法律の専門家ではない方がご自身で対応するには、多くの時間と手間を取られるため、非常に負担に感じるというケースが少なくありません。
また、法定単純承認事由や3か月の期間制限など、問題となり得る事項が多々あります。
このページでは、相続放棄において弁護士を活用する意味やメリットについて、詳しく解説させていただきます。

1 時間と手間のかかる手続を一任することができる

相続放棄の手続においては、取得すべき戸籍謄本類が複数あり、家庭裁判所に提出するために漏れなく収集する必要があります。
また、相続放棄申述書という書面を作成して、上記の戸籍謄本類などの必要書類を添えて、家庭裁判所に提出する必要があります。
そして、提出した相続放棄申述書および必要書類について、家庭裁判所との連絡・調整や、補正・追加書類の提出などが必要となるケースがあります。

これらの手続は、法律の専門家でない方にとっては、多くの時間と手間を取られ、非常に面倒に感じることが多いと思われます。
相続放棄をしなければならない人の人数・範囲が増えれば増えるほど、手続にかかる時間と手間はより一層大きくなります。
相続放棄を弁護士に依頼することで、このような面倒な手続を弁護士に一任することができるというメリットがあります。
弁護士は法律の専門家ですので、相続放棄の手続をミスや漏れなくスムーズに進めていくことができます。

なお、法律上、相続放棄の手続をすべてお客様の代理人として遂行できるのは、弁護士だけです。
行政書士や司法書士に依頼することもできますが、その場合には、手続の一部をご自身で対応しなければならなくなり、ご自身に一定の負担が残ることになりますので、注意が必要です。

2 債権者への連絡・対応を一任することができる

相続放棄は、被相続人が借金を抱えて亡くなった場合に選択されることが多いです。
相続放棄の手続においては、債権者への連絡・対応が必要となるケースが少なくありません。
被相続人が亡くなったことで、借金の返済が滞るわけですから、債権者からの催促の郵便物や電話が来ることも多いです。

このように、債権者から返済の催促を受けたのに対し、うかつに被相続人の遺産から返済を行ってしまうと、法定単純承認事由に該当し、相続放棄が認められなくなってしまう危険があるため、注意が必要です。
債権者からの連絡に対しては、相続放棄を行うことを前提とした適切な対応が必要となるのですが、ご自身で対応していくには負担や不安が大きいことと思われます。
銀行や信用金庫から借入があるケースなど、これから相続放棄を行う姿勢を見せると、債権を保証会社に移転する手続を取り、その手続に関連する通知書などが次々と送付され、非常に不安に感じられるケースも多く発生しています。

しかし、相続放棄の手続を弁護士に依頼することで、債権者への連絡・対応を弁護士に一任することができます。
そして、郵便物や電話連絡の対応窓口をすべて弁護士の事務所に移管することで、ご自身で対応することによる負担や不安から解放され、安心して、法律の専門家である弁護士の適切な対応に委ねていただくことができるのです。
なお、被相続人の借金の金額にかかわらず、債権者への連絡・対応の窓口となることができるのは、法律上、弁護士だけとなっています(司法書士では、140万円を超える借金に関し、代理窓口対応をすることはできません)。

3 相続放棄に関連する諸問題について適時・適切な助言を受けることができる

相続放棄にあたっては、上記のような家庭裁判所での手続や、債権者への連絡・対応のほかにも、様々な問題が発生してきます。
例えば、手元にある被相続人の財産をどのように取り扱えばよいのか、被相続人の職場から死亡退職金や未払い給与などを支払いたいと言われたが、受け取っても構わないのか、生命保険金や遺族年金の支給を受けても構わないのかなどの問題が出てきます。
相続放棄では、受け取れるものと受け取れないものがあり、安易に被相続人の財産を売却・処分したり、金銭を受領して費消してしまったりすると、法定単純承認事由に該当し、相続放棄が無効となる(借金の相続を免れることができない)こともあり得ます。

また、被相続人が死亡時に入院中であったとか、施設に入居していたなどの場合には、未払いの入院費や施設への費用を支払うべきだとお思いになることは、ごく自然なお考えかもしれません。
あるいは、被相続人が未払いであった税金の納付を請求され、税金だから支払わなければならないとお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
この点、これらの支払については、相続放棄をする以上は、支払を拒否することができます。
しかし、被相続人が入院・入居していた病院・施設に迷惑を掛けたくないという思いもあるかもしれません。
この点、上記と同様に、被相続人の財産からの支払を行ってしまうと、法定単純承認事由として、相続放棄が無効とされる危険があるのですが、実は、相続人がご自身の現金・預金から支払をする分には問題はありません。

以上のほかにも、相続放棄にあたっては、様々な問題点・疑問点が出てくるのが通常です。
ご自身のお考えだけで物事を進めてしまうと、後々大きな法的問題を引き起こしてしまうことも考えられ、相続放棄においては常に慎重な判断が必要となります。
法律の専門家である弁護士に相続放棄を依頼することで、これらの問題点・疑問点をクリアしながら、安心して手続を進めていくことが可能となります。

4 イレギュラーな事案にも対応することができる

相続放棄の手続は、被相続人が亡くなったことを知った時から3か月以内に行わなければなりません。
つまり、相続放棄をするか否かの判断については、3か月以内に出さなければならないということです。
相続放棄の手続には、戸籍謄本類の収集や相続放棄申述書の作成および家庭裁判所への提出を行う必要があるため、実際の判断までの時間は3か月よりも短いものと言えます。
しかし、被相続人の遺産の調査に時間がかかったり、思わぬ借金が判明したりして、3か月以内に相続放棄をするか否かの判断をすることが困難なケースもあり得ます。
このような場合には、家庭裁判所で「相続の承認又は放棄の期間伸長の申立て」という手続を行うことによって、相続放棄の手続の期間を延長してもらう必要があります(なお、期間の延長が認められるためには、延長の必要性について家庭裁判所で申告する必要があります)。

また、相続放棄の手続を行わないまま3か月が経過したあと、突然多額の借金が判明するというケースもあります。
上記のように、相続放棄の手続には3か月の期間制限があるのですが、借金の存在を知らなかったことに相当な理由がある場合には、例外的に3か月経過後の相続放棄が認められることもあります。
もっとも、どのような場合に3か月経過後の相続放棄が認められるのかについては、ケースバイケースであり、判断が微妙な場合も少なくありません。
なお、3か月経過後の相続放棄が認められる場合であっても、借金が判明してから3か月以内に手続を取ることが必要となりますので、注意が必要です。

以上のような3か月の期間制限の問題など、相続放棄にはイレギュラーな事案が存在しますが、法律のプロである弁護士に手続をお任せいただくことで、最適の対応を講じていくことが可能となります。

5 相続放棄以外の手続も考慮した助言を受けることができる

被相続人に借金があるからと言って、相続放棄を行うことが必ずしもベストの選択であるとは限りません。
弁護士は、法律の専門家として、相続放棄以外の法的手続にも配慮したうえで、お客様にとって最適のご提案を行うことが可能です。
相続放棄をするべきかどうかも含めて、まずは弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。

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相続放棄

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●相続放棄の手続の流れ
●相続放棄のメリット・デメリット
●相続放棄の注意点
●相続放棄で受け取れるものと受け取れないもの
●どのような行為が単純承認に当たるのか?
●遺産分割協議など遺産の処分をした場合の相続放棄
●相続放棄後の遺産の管理について
●相続放棄の取消し、無効について
●相続放棄の期間伸長
●3か月経過後の相続放棄
●再転相続とは?相続放棄との関係性と対処法について弁護士が解説
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