遺留分の権利者となるには、法定相続人であることが前提です。
したがって、次のようなケースでは、遺留分の権利はありません。
①相続放棄をした場合
相続放棄をした場合には、遺留分の権利も失われます。
なお、相続放棄をした場合には、下記の③相続欠格や④相続廃除とは異なり、代襲相続が発生するわけではないため、相続放棄した者の子や孫が遺留分の権利を主張することはできません。
②遺産分割が完了した場合
遺産分割が成立した後は、遺留分の権利を主張して相続争いを蒸し返すことはできません。
③相続欠格に該当する場合
相続欠格とは、民法891条に規定される以下の場合に該当したときに、相続権を失う制度のことです。相続欠格に該当する場合には、遺留分の権利も認められません。
なお、相続欠格に該当する者が被相続人よりも先に死亡していた場合には、その子が代襲相続人となり、遺留分の権利が認められます。
●故意に被相続人や先順位・同順位の相続人を死亡させ、または死亡させようとしたために刑に処せられた者
●被相続人が殺害されたことを知っているのに、告発・告訴をしなかった者
●詐欺・強迫によって、被相続人が遺言を作成・撤回・取消し・変更することを妨げた者
●詐欺・強迫によって、被相続人に遺言を作成・撤回・取消し・変更させた者
●被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
④相続廃除がされた場合
相続廃除とは、相続人となるべき者が、被相続人に対して虐待や重大な侮辱をし、またはその他の著しい非行があった場合に、家庭裁判所に申立てをすることで、その者の相続権を剥奪する制度のことです。
相続廃除がされた場合には、遺留分の権利も失います。
なお、相続廃除された者が被相続人よりも先に死亡していた場合には、その子が代襲相続人となり、遺留分の権利が認められます。
⑤包括受遺者
包括受遺者とは、遺産の全部または割合的一部について、遺贈を受けた者です。
例えば、「遺産の全部を遺贈する」や「遺産の3分の1を遺贈する」といった形で遺贈を受けた者は、包括受遺者に該当します。
包括受遺者は、民法990条で相続人と同一の権利義務を有するもの規定されていますが、相続人そのものではありませんので、遺留分の権利はありません。
⑥胎児
民法886条では、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と定められています。
胎児については、生まれた時点で遺留分侵害額請求の権利行使が可能となります。
逆に言えば、胎児は生まれるまでは遺留分侵害額請求を行使できません。
また、死産であった場合には、もともと遺留分の権利がなかったものとされます。
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